学術変革領域研究「超セラ」の公募研究

学術変革領域研究 (A) 「超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア」の公募研究に採択されました。研究テーマは「結晶中におけるリン分子の結合切断と形成を用いた化学アクチュエータの創製」、研究期間は2023年4月から2025年3月までの2年間です。

従来のセラミックスには、光触媒材料 TiO2 や圧電材料 BaTiO3、銅酸化物高温超伝導体 YBa2Cu3O7 などがあります。これらのセラミックスでは、遷移金属イオンの周りを酸化物イオン O2- が配位し、結晶場分裂したd軌道が機能や物性を担っています。

最近、京都大学の陰山洋先生を中心として、複合アニオン (Mixed anion) セラミックスの研究が進展しました。酸化物イオン O2- に加えて窒化物イオン N3- や水素化物イオンH を遷移金属イオンに配位させることで、d電子の機能や物性が格段に発展しました。例えば、酸窒化物における光触媒機能の向上などです。鉄系超伝導体 LaFeAsOも酸化物イオンとヒ素イオンを含む複合アニオン化合物です。

複合アニオンセラミクスの研究から、さらに新しいセラミクスの芽がでてきました。それが酸化物イオンに加えて酸素「分子」のイオンを有するセラミックスです。酸素分子を含むセラミックスでは 2O2- <–> [O2]2- + 2e という酸化還元反応により、これを電極とした電池の容量が飛躍的に向上しました。今まで脇役だったアニオンが主役に躍り出た訳です。これを契機として、無機結晶中に分子を構成要素として含む物質、すわなち超セラミックス (Supra Ceramics) の研究が始まりました。それが学術変革領域研究 (A) 超セラミックス「分子が拓く無機材料のフロンティア」です。

私たちは、この研究領域において SrNi2P2 などの層状遷移金属リン化物に着目します。これらの化合物は、結晶中に P2 分子を含むので、超セラミックスといえます。この P2 分子が結晶中で解離や再結合する構造相転移が起こり、同時に結晶の巨大な伸び縮みが生じます。これを用いて「化学」アクチュエータを創出します。さらに P2 分子の化学結合の揺らぎに起因する高温超伝導を狙います。超セラミックスの新しい機能と物性の開拓にも挑戦します。

野原 実
Research

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